恋色カフェ
机の上を片付けている間も、落ち着かないことこの上なかった。おかげでケースに入っていたクリップを、床に思いきりぶちまけてしまった。
急いで片付けて、店長よりも先に店を出てしまえば問題無いんじゃないか、なんて。
クリップをぶちまけたのは、そう焦ったせいもあったんだけど。
無事、机の上もクリップも片付け終わり、タイムカードの処理をしようと、出入り口に近づいた時──、開いてしまった扉。
「お疲れー」
……間に合わなかった、か。
階段を駆け上がってきたのか、店長は少しだけ息の上がった、吐息まじりの声で。
「……逃げようとしただろ?」
「いえ、そんな……」
「残業代払うんだから、逃げるなよ」
「残業代は、本当にいいです」
「いいから、こっち」