恋色カフェ
ドクン、なんて、勝手に鳴らないでほしい。特別なことを言われた訳でもないんだし。
「率直な感想を聞かせてほしい」
ほら。これは仕事の延長。ただ私がたまたま、最初に試食するっていうだけ。
不安定すぎる心には、いちいちそう言い聞かせないと、片側に大きく傾いていきそうで──。
「では、遠慮なくいただきます」
無理矢理、仕事モードに切り替え、私はスプーンで塊から一口すくって、口に入れた。
「…………美味しい……」
あまりの美味しさに、余韻に浸ってしまった程。
「何せここはカフェだからね。エスプレッソもいろいろ試してみて、一番合う豆を使ってる」