Mirror World
一枚のテスト
ごく普通で、ごく平凡な高校二年生の俺。
毎日バイトと勉強づくしの生活で、青春なんて目も向けなかった。
ただ、同級生や先輩には明るく振る舞った。
あえていうなら媚びを売っているのと同じ。
それでも物足りないこの人生。
「珍しいな‥お前が赤点採るなんて」
テスト返却日のことだった。
知能では負け、いや赤点という言葉など聞いたこともなかった。
先生から一枚の答案用紙を受け取る。
その項目には世界史、と示されていた。
これは何かの間違えです、人目を気にせず言い切った。
先生は深いため息を零し、ポケットから一枚の紙切れを差し出した。
「赤点くんは強制。復習しろ」
苦笑いで押し付けてきた一枚のチケット。
世界歴史博物館、チケットにはそう示されていた。
唖然しながら自分の席に着く。
「何んだ、それ」
友人の塚本が怪しげに問いかけてきた。
「何それって‥一緒に行くか?」
「パス」
チケットをひらひらさせ誘ったが、ためらいなくあっさり断られた。
仕方ない、やることもどうせないから‥。