Mirror World
「‥君、大丈夫‥?」

仰向けになった体を起こし、少女に話しかけた。
しかし、少女の姿はなかった。
ただ、シンプルな鏡が暗闇の中にぽつりと浮かんでいた。
立ち上がり、その鏡に向かって足を運び、手を伸ばした。

「迎えに来ましたよ」

その手をしっかり握り締め、ぐいっと鏡に引きずり込んだ。
若い男の綺麗ない手。
若い男の姿も格別に綺麗だった。


「あの‥貴方は何者ですか?」

浮かぶ白い空間。
若い男はにこり、と笑顔を浮かべた。

「私は世界に導くもの。さ、お行きなさい。そしてまた会いましょう」
「ちょっ!?」

綺麗な手は僕を離し、白い空間の底へ急落した。
そしてまた会いましょう、ただその言葉が胸につっかかった気分。
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