Mirror World

「遅れちゃった。ごめんね」

時間は15分程度経過した。
時計屋はつんっとした態度でお茶を入れ始めた。
帽子屋の両手には可愛らしいショートケーキを持っていた。
それを切り分ける時計屋。
(もしかして時計屋は帽子屋の下僕!?)

「ほらよ。帽子屋のケーキは格別だ」

苺の大きい一切れのショートケーキをそっと受け取った。
二人は紅茶を口にして微笑む。

僕は迷わずシルバーのフォークで柔らかいスポンジを突いた。

「‥あの子」

美味しいそうな生クリームが零れ落ちる。
目に入ったのは庭の隙間から見える道路。
そこにはあの少女が立っていた。
フォークを皿に置き、少女の元へ走った。
早く捕まえないと。そしてここはどこか?と聞き出す為に。

「優兎!?」
「時計屋、止めなくていいよ」
「帽子?」
「その方が優兎の為であり、面白いじゃないか」

走ってやっと少女が立つ道路へ出た。
少女はためらないなく走り出す。
一体、何がしたいんだよ。
息を荒くしながら追いかけた。
無意識の内、足元は透明の階段の上だった。
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