狂い人の世界 ~マネキンに恋した少年~
閻魔=申し訳ございません、まことに。
   お叱りを覚悟で申し上げますならば、あなた様の気まぐれ・・
   申し訳ございません。これは、言い過ぎでございました。
   人間世界において、
   時代々々におけるその時々の、道徳観念・法律によって、
   正誤の判断が下されるのは、致仕方のない事でございましょう。

神 =ふむふむ・・

閻魔=しかしながら、それらは一貫性のないものが多いのでございます。
   ある日突然に、覆ることもあるのでございますから。
   首をお傾げになるとは、意外でございます。
   お許しになられたではございませんか。
   原爆などと言う、途方もなく恐ろしい武器のご使用を。
   あれ程にお止めしたのに、でございます。

神 =あぁ、あのことかね・・。
   うむ、あの時は私も、どうかしていた。
   特攻などという愚行を、余りにも繰り返すものだから。
   つい、お灸を据えたくなってしまった。
   あれは確かに、私の誤りだったようだ。

閻魔=失礼ながら・・。
   神であるあなた様に、万が一の誤りも許されないのでございます。
   あのことから、彼の国は又しても、大きな蛮行を犯してしまいました。
   枯葉剤などという世にも恐ろしい薬剤を、何を血迷ったか、
   同じ人間相手に使用したのでございますから。
   しかし原爆にしろ、枯葉剤にしろ、
   当時においては止むを得ない決断だと、
   多くの者が考えたのでございますょ。

神 =そうよのぉ、あの時は驚いた。
   私に問い掛けることもなく、じゃったのぉ。
   傲慢そのものじゃった。
   まぁ、その後、彼の国にもお灸を据えはしたが。

閻魔=お灸と申されましても、今では唯一の超大国として、
   君臨しておるではございませんか。
   まぁ確かに、
   もう一方の大国の自滅といったことからではございますが。
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