あなたを愛した(完)
「……和人」
あたしの涙がやっと止まって、サクラも見えるようになってきたとき。
今でも忘れへん。和人はもういいひんかったんや。
「……――」
あたしが見たさいごの和人は微笑んでた。
あたしに笑ってくれててん。
それが本間に忘れられへんくて、あたし、日が暮れるまでそこにいてた。
綺麗な色したサクラが夕闇に溶け込む前に自転車跨って、必死でこいで家帰った。
きょうの昼まで和人が乗ってた自転車。
ようわからんけど、乗るん、ちょっとだけ躊躇うてしもた。
なんでなんやろな、いつまでたってもわからへん。
和人、もう生まれ変われへん言うてた。
そったら今、和人はどこでなにしてるんやろ。
あたしが見えへんくても、どっかで笑っててくれたらええな……。
まあ、和人がいいひんくてもあたしのなかではいるから。いつでも笑っとるからっ!
あたしはもう、大丈夫なんや。
和人 本間に ありがとうな――