あなたを愛した(完)
「……和人、なんでなんも教えてくれへんの? あたしが悪いんやないんやったら教えてくれてもええやん」



そしたら和人はあたしの方見て、なんかえらいおかしなこと言うてきた。



「俺がもし……鬼、だったらどうする?」



言うてることはおかしかったけど、和人の目は今まで見たことないくらい真剣やった。



鬼て、あの角生えてる鬼



「そんなんいるん? あたし鬼なんて絵本でしか見たことないけど」



「それが……いるんだ。俺も初めは驚いた。けど、驚いたところで事実は変わらなかった。……俺は、鬼なんだ。それも、どこから生まれどこへ消え逝くのか分からない、溶ける鬼。種族名は――六花鬼。雪と時を同じくして世に生を受け、雪融けとなる春を迎えると溶けて消えると言われている……鬼、俺」



「えっ……?」



お、鬼? 和人が鬼?



「そんなん……そんなん、あるわけないやんっ。あたし騙されへん、騙されへんで! 和人、本間はどうなん? なんで嘘つくん? あたしのこと……嫌い……?」



嫌いっていう言葉口にした瞬間、あたしは自分で言うてることが悲しすぎて涙が出てきた。



「嘘……なんやろ? 和人」



「嘘なんかじゃない。俺は今までに一度だって嘘を言ったことはない」



……確かにそのとおりや。せやけど、今回のことばっかりは信じることができひん。



「和人。……和人、違うやろ? 鬼なんかとちゃうやろ?」



「違わない。俺は鬼なんだ。……もうすぐわかる。身体が溶けそうに熱い……」



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