あなたを愛した(完)
「……春、まだ寒いで? やのに和人、溶けるん……?」



目尻に涙が溜まる。



 あたしはいつの間にか和人が鬼やいうこと受け入れたみたいで、他はもうようわかなんなってしもてる。



「春の気温は……六花鬼にとってはすごく暑いんだ。息が苦し……くらい……」


「六花鬼って、そんなに弱いんや。なあ和人、おばあちゃんが……言うてたんやけどな、六花鬼て生まれ変わるらしいで。……また、来年の冬会えるかもしれへん」



そしたら和人は、苦し塗れの笑顔で応えてくれた。



「ごめんな紗江。俺は……もう、生まれ変われねえんだよ。六花鬼は六回生まれ変われることができんだけど、俺はもう六回生まれ変わ……った、から」



また、嘘やろ、て言いとうなった。


でもこれは多分、本間のことなんやろうな。和人の目がそう言うてるし、おばあちゃんも言うてた記憶あるし。



……もう、和人には会えへん。これが最後。



「紗江……、信じてくれるか?」



辛そうに細められた目からは徐々に生気が薄れてってるように見えて、あたしは動くことも言葉を発することもできひんくなった。



だって、和人が……もうすぐ……。



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