あなたを愛した(完)
「信じるか信じないかはお前次第だ。俺が溶けたあとでも……信じてくれると嬉しいんだけど」



……溶けたあと。


和人が消えていいひんくなったときのこと。



そんなん考えたくもないんやけど、もうすぐそのときが迫ってきてる。



考えるような間もなく和人が溶けていいひんくなる。



「俺は消えるけど、紗江と過ごした今までのことは忘れねえから。ずっと忘れたりしねえよ。だから紗江も、俺のこと……ぐっ……」


「……っ!」



涙が堰って溢れた。



あたしは視界がぼやけて和人のことが見えへんくなる。



「泣くなよ紗江……。紗江のこと忘れねえって言ってんじゃん……!」


「……ぃうっ……和人……」



搾り出すようにして紡がれる、残り少ない和人の言葉。



掠れてるねんけど、それがすっごい力強く聞こえんねん。本間、落ち着く……。



 落ち着くと思たら、また涙が止まりそうになくなった。



「和人……あたしぃ、あたしぃ……っ」



あかん、言葉にならへん。いっぱいいっぱい伝えたいことあんのに……。



「わかったって紗江、無理しなくていいよ。言わなくても分かるから」


「ううっ、和人……!」



無意識やった。こっちに向けて手広げてくれてる和人の胸に飛び込んだ。



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