つないだ小指
結城郁人は無口だった。


でも、その容姿からク-ル王子などと呼ばれていた。


彼といると、みんなからの視線が集まる。


私と郁人は人から見るとよく似ているらしい。


でも性格が面倒見のいい姐ご肌だったので菜々姉などと呼ばれた。


「菜々美は顔は王子に似てるけど、性格がね~。」などとよく言われた。


頼りないママの面倒をみているのだから自然とそうなってしまう。


やさしい両親におっとり育てられた郁人とは違うのはあたりまえ。


自己中のの中学生だった私は、


郁人のやさしい視線や、思いやりを一身にうけていたのにもかかわらず


それに気付こうとしないで、郁人を傷つけた。



周りにいる誰もが気付いていたのに。


いや、気が付いていた。



あの頃の私は恋がしたかった。


郁人に恋愛感情は持てない。


そう思うことで自分を正当化していた。
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