つないだ小指
「私、決して縛られてるなんて思っていません。

 ただ、

 私の想いを誰かに否定されるのは嫌なんです。

 だから、

 誰かに頼っている自分では駄目だと思ったんです。

 ここでの暮らしは幸せで

 それは紛れもない事実なんです。


 パパありがとう。

 私を大切にしてくれて。

 パパが大好きでした。

 でも、少し離れてみようと思います。

 わたしは、いつも皆に守られて来ました。

 たぶんこのままじゃ駄目なんです。
 
 自分の足で立って、

 郁人と対等な人間になりたいんです。

 郁人に向かい合って、

 本気の想いを言えるようになったから、

 今度は自分を試したい。

 我儘でごめんなさい。

 愛菜には会いたいのでしょっちゅう来てしまうかもしれません。

 いいですか?」


「ああ、頼むよ。あの子と母親を繋ぐ人は君だけなのだから。」


「はい。」


「ゆっくりと準備していいからね。あまり急がんでくれ寂しいから。」


最後の言葉が私の心を温かく染めていく。


「はい。そうさせてもらいます。」


いつものようににっこり笑う結城パパの笑顔に郁人を見た。

やっぱり親子だな。  

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