つないだ小指
「よかったな。明日届けば部屋らしくなる。」


「うん、ありがと郁人。荷物も明日着くようにしてあるから、

 明日になったら住めるようになるから、結城家は今夜が最後かな。」


「親父さみしがるな。」


「そうだね、でも、私の方がしばらく寂しいかも。」


「ホ-ムシックになってすぐ戻っちゃたりして。」


ありえるなぁ~


「でも、頑張る。郁人だって向こうで頑張ってるんだもん。」


「帰るか?」

郁人がギュッと手を握った。


「うん。」

郁人と帰る結城家への道。幼いころから何回繰り返してきただろう。

でも、今日はなんだか寂しくて。目がしらが熱くなった。


「菜々美、どうした?」


ううん、と首を振って郁人の手をギュッと握った。

郁人がふっと笑って、握り返した。

幸せな時間。ずっと続けば嬉しいけど。私達は進んでいく。


自分のあるべき場所を築くために。
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