つないだ小指
「頼らないわよ春日なんて!

 郁人は、先回りしすぎだよ。

 私は一人で頑張るの。

 誰かを頼る事もあるかもしれないけど

 それは、自分で選ぶ。

 そのために一人になったの。



 うん、でも信じてくれるのは嬉しい。



 ねぇ郁人。私はもう揺れない。

 自分の気持ちに嘘つくのはもう沢山なのよ。」


「うん、分かった。」


いつの間にか郁人の膝で寝息を立てる愛菜。

ごめんね、あなたの傍にずっといたかったけど、

お姉ちゃんはもう少し大人にならないといけないの。

明日から愛菜の笑顔が見られない。

耐えられるだろうか。


愛しそうに愛菜の髪をなでる郁人の指に唇を寄せた。


結城家での最後の夜が更けていく。

いつか、ここに戻ってくるつもりだ。

結城菜々美となった時に。

それまでに、私がどうか成長していますように。
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