つないだ小指
フッと笑ってそのまま腕が引かれる。

ギュッと抱きしめられて郁人の匂いに包まれた。

溢れた涙が郁人の肌を濡らす。


「怖いのか?大丈夫だ、愛してるよ菜々美。」

「なあ菜々美、あの家は傷ついた小鳥が羽を癒す場所だったんだよ。

 羽が癒えた鳥はもうその場所は必要ないんだ。

 飛び立っていいんだよ。

 お前は自由になっていいんだ。」


「郁人。」


「でもきっと菜々美は俺を目指して飛んで来てくれるよね。」


「郁人。」


「指輪、、、外す?。」

ちょっと心配そうに聞いて来る。


「はずさない。」


見つめあって唇を重ねる。

再び重なった体は、さっきよりさらに熱を帯びていく。

もっと近くに来て。

私の心がくるおしく郁人を欲しがる。




< 117 / 153 >

この作品をシェア

pagetop