つないだ小指
郁人SIDE


永澤 遥は、永澤副社長の娘だった。


履歴は上がって来ていたので、

直ぐに副社長の思惑は理解できた。

永澤は、自由奔放な性格で、

アメリカ人の彼がいるらしく

幸い俺には興味がなさそうだった。

副社長は、なおさら別れさせたいらしく、

俺との縁談を強烈にプッシュしてきた。

永澤は、菜々美と俺との関係も知っていたので、

断固とした態度で断り続けてきた。

俺たちの間に、何の想いも関係も生まれることなどありえなかった。


あの日まで、




事故の日、

俺は会社に連絡をしてから、永澤に付き添っていた。

「意識を取り戻しましたお話しなさいますか?」

担当医が俺に話しかけた。

「ご家族の方に連絡された方がよろしいかと、お話したいことがあります。」

副社長には連絡してある。

「時機に来られると思います。」

「そうですか、あなたはどのような?」

「会社のものです。」

「もうご存知でしょうか、永澤さんは妊娠5カ月です。」

「え、知りませんでした。」

「たぶん、つわりで食事を摂られなかったのでしょう、

極度の貧血をおこしています。このまま入院されることをお勧めします。」


俺一人が、この先この秘密を抱えることになった瞬間だった。





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