つないだ小指
「郁、これ使ったらいい。」
書斎から戻ったパパが郁人に小さな白い箱を手渡した。
「香菜子に渡すはずだったんだ。あの日、、、。」
それは、じゃまにならないようにスッキリデザインされたエンゲ-ジリング。
「香菜子がデザインしたんだ。
いつか菜々美か郁人が結婚するときに譲るんだって張り切って。」
ママが?
ジュエリ-デザイナ-だったママの最後の作品。
欲しい。でもそれを受け取るっていうことは
婚約するって、、、コト?
「ありがとう父さん。喜んで使わせてもらうよ。」
郁人は私の手を取ると指輪を握らせた。
「今じゃなくていいよ。待ってるから、きっと菜々美はめてくれるよね?」
こうして、わたしは返事もしないうちに郁人の婚約者になった。
いいの郁人?
いいのかなわたし?