つないだ小指
どのくらい走っただろうか、

ここは、何処なのか?

これからどうするのか

こんなところで迷子になるかもしれない

荒い息を吐きながら

情けない自分の身を呪った。

公衆電話を見つけた。

とりあえずこの場所が何処かわかるだろう。

一歩進もうとしたとき、



「菜々美待って!」


郁人が追いかけてきた。



「お前足速すぎ。少しは手加減してくれよ。」



「追いかけてきたんだ。私が心配なの?」


「当たり前だろ、お前ここの土地勘なんかないだろ。」



「大丈夫よ、大人なんだから。」


フッと笑った。


郁人のこの柔らかな笑顔好きだったなあ。

涙が溢れた。


「菜々美会いたかった。」


「私は、会いたくなかった。」


「話聞きに来たんだろ。」


「聞きたくなかったから。

でも、言わないで悩んでる郁人がかわいそうだから。

別れてあげに来たの。」



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