つないだ小指
式は、ホテルの中庭で行うパ-ティ形式のもので、

結婚式の披露宴ほど、かしこまったものではないらしい。

郁人はかかりの人と打ち合わせをしているようだ。

私に気がついて走り寄ってきた。

「仕事抜けられたんだ。」

「うん。エステの時間待ちなの。」

「緊張してる?ホテルの部屋とってあるから休んでていいよ。」

「大丈夫だよ。」

「もし、菜々美が嫌なら、俺一人でもなんとかするし。」

「私を甘やかさないで。」

「甘やかしたいんだ。菜々美が傍に居てくれるんだったらなんだってするよ。」

「駄目でしょ。私は、郁人の隣に居ても自分の力で立っていたいの。

郁人の奥さんじゃなくて、菜々美個人として。」

「なんか、高校の頃の菜々美みたいだ。」

「そうね、郁人を困らせた頃の私になるかもね。

あの頃の私に郁人は憧れてたんだよね。」

「うん、眩しかったな。」

「覚悟してね。」

「楽しみにしてるよ。」


< 144 / 153 >

この作品をシェア

pagetop