つないだ小指
「ね、菜々美、部屋行かない?」耳元で囁いた


「残念でしたエステの時間です。」


「ちぇっ、でもいらなくないエステなんて。十分キレイだし。」


「いるのよ、

 明日は誰もが私を見に来るんだから。

 世界一きれいにならなきゃ。」


郁人に釣り合う私でいたいのよ。


「それ以上きれいになったら俺の気苦労が増えるだろ。」


「それは、しかたないわね。郁人は私がいいんでしょ。

 これからは、もっときれいになってもっとハラハラさせるわよ。

 郁人に釣り合わないなんて誰にも言わせないから。」


「なんか、怖いよ菜々美。どうしたの。」

ちょっと引いちゃった郁人?


「でもきっと郁人が欲しかったのはこんな私だと思うの。

 ずっと守らせてごめん。

 もう大丈夫、不安に押しつぶされたり、

 頼るばかりの私はやめたの。

 郁人が取り戻したがってた、私になるから。

 大人になってしまったから、高校生の時のような無茶はしないけどね。」


「あまり先に行くなよ。追い付けなくなる。」

何をいってるのよ郁人。

私のずっと前を歩いているくせに。


「郁人、大好きよ。」

私は、エステのサロンに向かって歩き出した。


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