つないだ小指
「菜々美。」

庭で、愛菜と遊んでいると、上から声が降ってきた。


郁人?じゃなくて春日かあ。


日に焼けてYシャツにネクタイ姿の春日が立っていた。


「何やってんのよ、仕事中でしょ。さぼりなのぉ?」


「ひどいなあ、九州出張の帰りだよ。ほら、おみやげ。」


「あ、いつもどうも、ごちそうさま。」


春日は就職してもよく家に顔を出す。



暇なの?



郁人と同じ会社なのにこの違いはなに?


「菜々美、いま暇なのって思ったでしょ。」


「あ、ばれたぁ?」


「暇じゃないけど寄ってんの。ホレ、郁人から預かった。あいつ今、九州。」



「知ってるよ。毎晩携帯で話してるから。」



「じゃ、俺が来るのも知ってたんじゃない?」


「それはない、春日の話をする暇はないから。」


「あのなあ、これやらないぞ。」


「あ~んうそうそ、いつも感謝してるよ春日様。」


「春日、今日カレ-食べていく?」


「おうっ。サンキュ-。」


春日は好きだ。やさしくて、明るくて、楽しい。


でも


郁人じゃなきゃいらない。


郁人会いたいよ。





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