つないだ小指
友人たちを送りだした後、リビングの入り口で笑って話している菜々美を見た。


一緒にいるのは春日か。


大学1年で、しつこく話しかけてきたやつそれが綾波春日。


特定の友人を持ちたがらなかった俺に、


『俺たち親友だろ』を連呼する奴に根負けしたように認めさせられた。


菜々美に似てる。そうも思った。


自信がなくてはっきりしなかった俺をいつも引っ張りあげてくれたのは菜々美だ


った。そして、俺にない引き出しをたくさん持っている菜々美に恋するようにな


った。意識するようになったのは、たぶん小6の冬。


家族で北海道にスキ-に行った。菜々美の親子も一緒だった。


スキ-は何度も来ていて俺は滑るのに夢中だった。


菜々美はまだ、ボ-ゲンもままならない様子だったが。俺の後を必死に付いてき


た。菜々美に勝てるものなんてなかった俺は、有頂天だった気がする。


滑り終わってロッジへ向かう時、初めて、菜々美が付いてきていないことに気が


ついた。


捜索隊が出て菜々美はすぐ発見されたが、脳振とうを起こしていて意識がなかっ


た。意識が戻った菜々美に謝りながらボロボロ泣く俺の顔を見た第一声が、


『誰ですか?』だった。今でも初めてあったようなキョトンとしたその顔が忘れ


られない。


1時間もすると、記憶の混濁は正常に戻り、いつもの菜々美に戻っていたが、


俺は、あの瞬間、菜々美に恋をしたんだ。


一目ぼれとでもいうような衝撃だった。あれから、


俺は菜々美から眼が離せない

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