つないだ小指

リビングの入り口で抱きしめられたまま、立ちつくす私。

心臓が壊れちゃうんじゃないかと思うほど早く鳴る。

郁人に聞こえちゃいそうで焦った私。


「ねっ、郁人玄関明けっぱなし、まだ片付けが終わってないし。」


郁人の腕は、離れない。


さらにギュッと力をこめて抱きしめてきた。


「郁人?」


「菜々美、ごめん、もう少しだけこのままいて。」


郁人の胸の音早くて大きい。ああ同じなんだなと思ったら嬉しくなった。


「うん。」


「会いたかった。」


「うん。わたしも会いたかった。」


「会いたかったよ。」


「うん。お帰り郁人。」


「ただいま。」


郁人の手が緩んで、肩をそっと押した


唇が暖かくなった


久しぶりの郁人のキスは甘いぶどうの香りがした。


「菜々美が欲しいんだ。」



耳元でささやく郁人の声は媚薬のように、心に染み込んだ



私は真赤になって、黙って頷いた。


もう一度繋がった唇はさらに深く沈みこんで口内の奥の方で絡み合った。


感覚がふわふわとしたものに包まれすべてが熱を持っていった。






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