つないだ小指
私は救急病院の廊下を走った。
廊下の待合席に郁人が下を向いて座っていた。
「郁人ぉ!、ママは、?赤ちゃんは?」
息を切らせて話しかける私に、
「赤ちゃん女の子だよ。」とつらそうな顔でくぐもった声で答える。
「そっかぁ、無事生まれたんだね。よかったあ。」
「-----。でもな、!」
声を詰まらせながらでみ、覚悟したようにはっきりと告げる。
「奈々美、落ち着いて聞いて!、香菜子さんは助からなかった。」
「----っえ?何、ママが?」
「病院に向かうタクシ-の中で急変して、呼吸が止まってしまったらしい。
ここに来た時には、もう心臓も止まっていて。
赤ちゃんは緊急手術で何とか助かって、今はICUで命を繋いでるんだ。」
「うそ、うそでしょ。だって今朝、笑って朝ご飯食べて、
幸せななろうねって言ったのよ。
わたしに、認めてくれてありがとうって。
わたしに家族をあげられるって幸せそうに笑ったのよ。
わたしに幸せをあげるって指切りしたのよ。」