つないだ小指
午後は午前中の実験結果をまとめて、室長に提出して、

その結果から、次の実験の必要性がある個所について会議を持つ。

再実験必要と認められたら残業となる。

今日は、再試は無しとなったなったが、新人の私たちに仕事の細かい説明と、

このラボの位置づけや、仕事内容の説明の時間となった。

「このラボは、室長と私だけの部署だったの。

室長が即戦力を入れてほしいと人事に掛け合ってやっと来てもらえたの。

ホントうれしいわ。

実験するのはわたしひとりで、間に合わないと室長が手伝ってくれるけど、

帰るのは毎日10時過ぎ。

あ~あ!人手が増えるって素晴らしいことよね。

二人とも実験も正確だし、毎日この調子なら定時に帰れるかも。

助かったわ。


ここだけの話、室長に手伝ってもらうと再試増えて困ってたの。」

ププッ

春日~っ言われてるぞ~

設楽さん手て面白い人。いくつ位なのかな。

年上だとは思うけど。


「あ、ねえ佐伯さん室長とどんな関係?。」

そうですよね、気になるでしょうとも。何でもないんですよ~

信じてください。

また、説明しなくちゃだよ。


「大学の同期です。私1年休学して、後輩になっちゃって、

 一年遅れの卒業なんです。」


「それだけじゃないでしょ、名前で呼んでたし。

 時々、佐伯さんを、うれしそうに見てたわよ。」


「え~っそれはちょっと怖いですね。見なくてよかった。」


「あら、かわいそう、室長の片思いなのね。怖いってひどっ!」


「よかった、室長相手じゃかなわないと思ったけど、

俺も彼氏候補に立候補していい。」


「もうっ荒川君まで、からかってひどいよ!!」

あははは、、、

とみんなで笑った。

この場に春日はいない。

実験結果を各支所に報告したり業務報告書を部長に出しにいっているのだ。


「室長には今日は帰っていいって許可が出ているので、帰りましょう。早く帰れ

る日は早く帰る。それは鉄則よ。」

テ-ブルの上を片づけながら、設楽さんの手が一瞬止まった。


「あ、わたし、結婚してるの。荒川君惚れちゃだめよ。」

キラリンと結婚指輪を見せる。

荒川さんが固まった!!

設楽さんてかなり面白い人だ。天然?


「惚れるかよ。」荒川さんが呆れた声でつぶやいた。


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