つないだ小指
ショーが始まったらしく展示水槽は人気がなく、

水の動く音とBGMだけが響いていた。

二人で展示の水槽を見て回る。

指をからめて手を繋ぐ、

何か、恋人っぽいなあ。

ふっ

郁人が小さく笑う。

「そんなに、うれしいの?」

「え、何?」

「さっきからにやけっぱなし。うれしそうだし。」

「うん、大学の時も手を繋いだけど。こんな感じじゃなかったでしょ。」

「あの頃は菜々美リハビリ中だったから。繋ぎ方も気を使ってたよ。」

「郁人の優しさって、私を子ども扱いして甘やかしてたものね。」

「菜々美の近づくなオ-ラは半端なかったからね。

 拒否されないように必死だったよ。」

「えっ初耳だよ。」

「菜々美の復帰した日、春日は初めて会っただろ。

 ちょっとした事にもおびえてて『生まれたばかりの小鹿みたいだ』

 って言ってたよ。」

「え~っなにそれ。」

「いや、まさにそれって感じ。

 おれは、心配でそばを離れられなかったんだ。」

「うん、感謝してる。あの頃の私を見捨てないでいてくれて。」
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