つないだ小指
「菜々美、郁人来てるんだって?」

会社の玄関ホ-ルで、春日が会うなり話しかけてきた。


「おはようございます、室長。佐伯です。」


「あ、悪い。佐伯さんお義兄様がお帰りだとか?」


「義弟です。帰ってますよ。会議です。」

エレベ-タ-に乗り込む。


「春日っやめてよ会社で郁人の名前出さないでよ。」


「ごめん、でも内緒なの?」


「う-ん、微妙?あえて言いたくないっていうか?」


「だって、正式に婚約したんだろ。指輪嵌めたし。」


「話したの?郁人。」


「だって、俺会ったときから婚約者だって紹介されたし。


大学時代の連中は 皆知ってるんじゃないか。


でもお前、『指輪してくれない』ってあの頃郁人嘆いてたからさ。


入社してきたとき指輪見てああそうかって思ってたんだけど?違うの?」



ガクンと止まりドアが開いた。


降りようとする春日に、


「わたし、どうしたらいいかわかんないんだよ。」


とつぶやいた。




< 77 / 153 >

この作品をシェア

pagetop