つないだ小指
あと、10分して、デ-タ-取ったら最後かな。

帰り支度を始めていると、

バンッと音をだしてドアが開いた

「お、菜々美いたな。」


「春、あ、室長ご苦労様です。」


「いや~部長の話長くて参ったよ。菜々美帰っちゃったかと思った。」


「後10分後のデ-タ取って最後です。まとめたら帰れるかと。」


「うん分かってる、わざとその指示書菜々美に渡したから。」


「わざと?」


「菜々美と話したかったから。今は、社内で個人的に話すのまずいだろ。

 この部屋でなら普通にいいかなあと思ってさ。

 これで、菜々美のお守役卒業かと思ったらなんかさ

 ちゃんと話しておきたいなと思って職権乱用!!」


「お守役って、私は子どもか?ひどいなあ。」


「まあ、勝手に俺が思ってただけだよ。

 郁人が居ない間俺が守ってやろうなんてさ。迷惑だったろうけどさ。」


「ううん、ありがとう。今回のことも感謝してる。

 春日のおかげだよ。自分でとどめさしちゃったけど、

 あの時春日に聞いてもらえたことでずいぶん楽になったし、

 自分の中のもの、郁人にも見せられた。ありがとね春日。」


「後悔してるよ。」


「え?」

「渡したくないよ、渡すことになる後押しなんてしたくはなかったんだ。」

体を震わせながら吐き出すように言う春日。


「何言ってるの?わからないよ春日。」


「菜々美が好きなんだ。会ったときから一目ぼれなんだ。」

 空気が止まった、うそでしょ、いつもみたいに『なんてな。』って言って

 笑い取るつもりよね?
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