つないだ小指
結局実験はやり直しになり、終わったのは、10時だった。


「悪かったな俺のせいで。飯でもおごろうか?」


「ううん、家に帰って食べないと連絡してないから。愛菜も心配だし。」


「お前ってさ、家族が欲しいんだろ。」


「ん?」


「郁人にするしか選択肢はないんだな。」


「え?まあそうかな。」


「あの家に居たいから郁人なんじゃないよな。」


「え、いみわかんないけど。」

「まさか、郁人じゃなくて、

 あの家に自分の居場所が欲しいってのが理由じゃないよな。」


「か、関係ないよむしろ逆、

 あの家がない方が郁人にもっと早く向き合えてたと思うよ。」


「わかんないぞ、一度離れてみろよそしたら、郁人なのか、

 家なのかわかるんじゃねえの。」


「できないよ、そんなの。皆に迷惑かかる。」


「お前は、お前郁人と結婚したいのはあの家に留まりたいためじゃないのか?」


「違うっ!春日やめてよ、わたしは、郁人が好きなの。ちがうっ」

不意をつかれてよくわからなくなってしまって泣き出した。

「なんなら、俺のとこに来い。」

「春日!!」


強引に手を引かれ連れ戻された。

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