君と僕と。
「日本語がお上手ですな」
「…?」
口火を切ったのは原田大佐だった。
「はっはっは!驚いているようだが顔に出ない質だな。結構結構!」
「……はぁ」
精悍な顔に似合わず豪快に笑う原田大佐に困ったように小さく返事をする蛍詩。
一頻り笑ってから一転、原田大佐は真面目な顔で続けた。
「桜咲(オウサキ)蛍詩。
3歳の時に米国へ渡り、15歳でパイロット育成学校に入学。
優秀な成績で卒業した後、戦況の悪化により19歳で帰国。
両親は戦火の中死亡。
20歳で子供を授かるが、体の弱かった妻は子供を産んだ代わりに命を落としてしまった。
現在は6歳になる娘と二人暮らし。
悪いが勝手に調べさせてもらったよ」
「何というか…やはり軍はすごいですね」
自分の経歴を空で言い切った原田大佐に対し、蛍詩は純粋に感心していた。