君と僕と。
「……し…仕方ないから……返したるわ」
驚きの涙なのか、嬉し涙なのかもわからない。
とにかく少女はうまく喋れないほどがむしゃらに泣いていた。
「相変わらず生意気な娘やな」
「そうや。うちはあんたにしか…蛍詩にしか面倒見れん生意気で手のかかる娘や」
「はは。確かにそうや。
希理、おいで」
蛍詩が手招くと、今までずっと蛍詩と名乗っていた希理は迷わず父の胸に飛び込んだ。
「背が伸びた分、タックルも強烈になったな」
「うっさいわ!!蛍詩が3年もいないからいけんのやボケ!
家守んのだって…野菜の面倒見んのだって……大変やったんやで!?」
「うん、そうやね。待たせてごめんな」
少し大きくなった愛娘の頭に顔を埋めて、二人はまた平穏な日々を送れることの幸福感を噛み締めた。