君と僕と。
「ただいまー!」
不意に聞こえてきた声にはっとした蛍詩は、引き戸に挟まっていた封筒を急いで近くの戸棚にしまった。
「早かったな。絹代ちゃん居らへんかったんか?」
いつものように縁側から家にあがる幼い娘を迎え入れる。
「いや…居ってんけどな……」
いつもと様子の違う娘の背中が気になり、蛍詩はそっと隣に座った。
「……なぁ蛍詩」
「ん?」
「戦争……行かへんよな?」
「……」
娘がいるところではなるべく戦争という言葉を口にしないようにしていた。
きっと彼女は今日、絹代ちゃんの家で何かを知ったのだろう。
蛍詩は表情を一切変えずに頬杖をついて少しの間黙っていた。
そして無言のまま娘の小さな頭をぐしゃぐしゃと撫でた。