君と僕と。
君への想い。
――リーン…リーン……
「あ………暑い――っ!!」
(……起きた)
夏のうだる暑さの中、涼風に吹かれて風鈴が楽しそうに透明な音を奏でている。
そんな夏らしい風景広がる縁側に暑苦しい雄叫びが響いた。
「ええ加減にせーよ夏ーっ!しばくぞボケー!!」
(今日も平和だなぁ)
別段驚く様子もなく縁側に座ったまま蛍詩は機嫌の悪い娘を横目で見る。
「毎朝テンション高いなぁ」
どうやらこれがこの家の日常らしい。
「てんしょん?何やそれ」
体を前屈みにして腹部を掻き、だらしなく縁側へと歩いてくる。
「腹掻きながら歩く女性はモテんよ?」
「別にモテんでええもん」
「きーりーちゃーん!あーそーぼー!!」
少し不機嫌になった蛍詩の娘・希理(キリ)は玄関から聞こえる女の子らしい声に顔を綻ばせた。