記憶混濁*甘い痛み*

「オレもオカシイと思いますよ?夜になると幻覚が見えて幻聴まで聞こえる。愛しい妻がオレ以外の男に甘え、いつか肌を重ねるようになるのかと……考えただけで、怒りで身体が震えてくる位に」


「けど……それを望んだのもあなただ」


「ええ。今の友梨に…あの事実は受け入れられない。オレを思い出す事でその記憶まで引き出されるなら……オレとの記憶なんて、戻らないままでいい」


もう姿の見えない窓を見つめて、和音は諦めたように、微笑った。

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