記憶混濁*甘い痛み*
------夕食後。
友梨の言葉を注意深く確かめながら、芳情院は会話を進めてゆく。
「高校では…二学年合同の修学旅行に行けたのだったね。どこに行ったか…覚えているかい?」
「……どこだったかな」
友梨は少し考えると。
「寒い所…私、風邪をひいてお兄様に怒られた」
実際は和音といざこざがあり、旅先で行方不明になった事で芳情院に叱られた。
やはり和音に関する記憶は書きかえられている。
「ねえ、お兄様」
そんな事より、と、いう感じで、友梨。ベッドの上から、ソファーに座る芳情院に視線を向ける。
「んん?何かな?」
読みかけの雑誌を膝の上に置いて、芳情院も友梨に視線を合わせる。