記憶混濁*甘い痛み*

その、ルイジの言葉を聞いた友梨は


「……じゃあ和音先輩には内緒にしておいてあげます」


と、小声でルイジに告げてから


「和音せんぱぁい、ルイジ先輩が代わって下さいって」


甘えた口調に戻って和音に携帯を渡す。


2人で暮らすようになってから、友梨は素直に和音に甘えられるようになった。


精神的、肉体的暴力に近い行為を受け、しばらくは和音がいても叫んで夜中に飛び起きるようだったが

カウンセラーが言う大切な何か(これが2人の間では子供だった)を、守りたい気持ちが増える度に、友梨の精神は安定していった。


和音はサンキュ、と、優しく友梨に笑みを向けてから。


「…何だよルイジ」


と、ワントーンほど低い声。


『ぎゃ!和音くん低音ボイスも素敵!って、怒ってんの?オレがエロ亭主っつったの聞こえちゃった?』


「…そんな事言ってんのか?オマエ最悪だな」


『うはぁん、冷たくすんなよお!オレにも友梨にするみたいに優しくしろ!』


「高校時代から友梨に抱きつこうとするストーカーにどうしてオレが優しくしなきゃなんないの?バカだろオマエ。あ、友梨、その辺の雑誌はオレがまとめて捨てるからイイよ。重い物持たなくてイイ」


引っ越しの準備をしにダイニングに移動した友梨を、和音が止める。


「…だって私さっきから何にもやらせてもらってないのだもの。友梨だって片付ける」


「じゃあ…そうだな、その机の上にある書類に新しい住所と電話番号、書いておいてくれる?午後病院に出しに行かないといけないからさ」


「はぁい。友梨頑張る。書いたらお昼ご飯の準備も頑張る。和音先輩、お昼何が食べたいですか?」



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