記憶混濁*甘い痛み*
「友梨が食べたい物でイイよ?作ってて食欲なくなるならオレ作るし」
「だめ。友梨が和音先輩の為に作りたいの」
「解った。ゴメン。じゃあ麺類が食べたい。後は友梨ちゃんに任せる」
「まあぁ…和音先輩、実は友梨も昨日から食べたかったんです。じゃあ、お昼は冷やしおうどん」
実は引っ越し前だというのに、昨日ストック棚にやたらと麺類が増えているのに気付いた和音であった。
最近の友梨の食指は麺類に動くらしい。
るりるりと楽しそうにリビングの机に移動して、友梨は書類に目を通す。
『オマエら…あいっかわらずらっぶらぶだなぁ。うらやましーぜ』
「勝手にうらやましがってれば?だからって邪魔しにくんなよな」
『ってか条野!友梨どうなの?無理させてないでしょーねっ!あんた友梨は華奢で身体弱いんだから気をつけなさいよ?ちなみにどうしてもの時は座位か側面位がイイって聞いたわ、でも十分、気をつけんのよ?』
いきなり声が変わった。声の主は和音と同期の美弥子である。
本人がバイセクシャルである事が関係しているのか、いないのか、友梨の事をとても可愛がってくれている。
「…美弥子?オマエは友梨の何なんだよ」
『心の恋人?』
「……それ違うだろ」
「和音せんぱぁい、新しい住所の番地って、末尾1で良かったんですよね?」