記憶混濁*甘い痛み*
……幸せを表現するとしたら、きっと無色透明の不定形だ。
すぐ側にあるから、大概は気付かない。
けれど、最初から気付いているのに奪い去られる者もいる。
何の欲も出さず、お互いを慈しんでいた2人を襲った悲劇。
優しく穏やかに流れていた時は一瞬で凍りつき、心に激しい凍傷を残した。
オレはいつまで…友梨を独り占めする事が出来るのだろうか?
愛しい愛しい、可愛い友梨を。
あの頃と真逆の場所に
条野と、オレがいる。
オレは条野の妻である友梨を抱きしめ唇を吸い、甘い吐息を聴く。
きっと丹念に愛されたであろう友梨の肌は敏感で、深く長いキスで甘やかな声を立てる。
過去に友梨に触れた時には、切ない悲鳴と嗚咽しか聞く事が出来なかったオレの身体は貪欲で
友梨の声を聴く為に嬉々として舌を絡め唇を吸い上げる。