記憶混濁*甘い痛み*

「……お痩せに、なりました?あの…もしかして…先日の私の態度に……嫌気を、さされまして?」


「……深山咲さん?」


先ほどまでは吹いていなかった風に

短大時代に和音からプレゼントされたCELINEのストールを揺らしながら、送り主の瞳を見つめる友梨。


「私…ずっと条野さんに謝りたくて…あんな、誘うようなハシタナイ真似…」


そう言って必死に和音に弁解しようとする姿は、まだ愛される事に慣れずにいた、高校時代の友梨のようだ。



……そんな切ない瞳で、オレを見るなよ。

今すぐ君を連れて、どこか遠く、誰もオレたちを知らない所まで、逃げ出してしまいたくなる。


「条野さん…?」


「……」


「条野、さん?やはり私の事、お許しになれないのね……?」


友梨の問いかけに、和音は答えられない。


『ああ、許せないよ』


そう、答えれば良いのだろうか。


オレを忘れ、偽りの世界に逃げ込んで、そのクセにまた、オレを求めて。


なあ、友梨 

その顔さあ、あの頃と同じだよな。

高校時代……婚約者がいた事で、オレへの想いに苛立ち、困惑していた、あの頃と。


すき、なんだろ?


オマエはオレを、求めてるんだろ?


だったら、もうイイんじゃないか?


こんな、訳の解らない状態は終わりにして、好きなら好きで、オレを選べよ。


「……」

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