記憶混濁*甘い痛み*

「……!」


そして、自分のその行為に戸惑い、和音と目が合うとビクッとした顔になり、触れていた手を自ら離した。


「……ゴメン、なさい。私…どうして、こんな……」


友梨は離した手で顔を隠し、ホロリホロリと涙を流す。


自分の中の感情に、身体が支配されはじめている。


抑えていた筈の理性は


10日の時間が空く間にどこか遠くへと追いやられた。


目の前の、この美しい男性に、触れたくて、優しくして欲しくてたまらない。




……私は汚れた生き物だ。


お兄様がいるのに、今、目の前にいるこの人に


心をストンと、盗まれた。
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