記憶混濁*甘い痛み*

「条野…さん…?」


引かれた腕と和音を交互に見つめ、友梨は不安気な顔になる。


けれど瞳の奥から、ユルリと溶け出すのは、官能の雫。


「……!」




コワイ、イヤ、デモ

……期待、している。

私は、彼に『何か』を望んでいる。

でも…でも…それは。




「…裏切れよ、神も、オニイサマも、全て…」


「!条野…さ、ん?」


さらに右手を引かれ、痛い位に抱きしめられた。


不思議と、力は強いが乱暴な感じはない。


あまりにも静かな和音の口調に、友梨は小さく悲鳴を上げたものの、圧倒的な想いを感じてその身を預けてしまう。


友梨は恐ろしい位の心臓の音を自分自身で感じながらも、和音に抱きしめられた腕を、振りほどく事が出来ない。

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