記憶混濁*甘い痛み*
友梨は、和音の手の甲から滲み出る鮮血を見ると、電池が切れたように動きを止めた。
「アカイアカイアカイ?」
和音の血と、拘束帯によって出来た自分の手首の血を眺めて『ひっ』と、短く息を吸う。
……その、瞬間。
「キライでいいよ。オマエを傷つけたのも、恐がらせたのもオレだ……」
と、言って、和音はシーツで自分と彼女の腕を隠す。
「……アカイ」
「だから…もう…友梨?自分を責めるな。オレを責めろ。オマエがキライなのは、オレだけだ。他の誰もオマエを傷つけてないし、これから先も傷つけない。オレ以外、誰も悪くない。だから、オマエは自分を責めなくてイイ」
「……?…キライ…だい…キライ!」
「うん……もっとオレを責めろ、友梨。そしてもしオレを少しでも覚えているなら……」
「…………」
「この左胸を狙って……オマエの手で、オレを殺してくれ」
「……!」
和音は左胸に友梨の耳を当てるように、抱きしめる。
すると友梨はビクッとして、身体をよじらせたものの、和音に抱かれ、徐々に薬が効いたかのように大人しくなってしまう。
「友梨……?息、もっと……ゆっくり吸って」
「……?」
「そう…上手。いいよ」
「…………?」
「こんなに…心も身体も傷つけて…ゴメンな…友梨」