記憶混濁*甘い痛み*
もうすぐ、待ち望んでいた筈の、あの日がくる。
その日をオレは、どこで迎えたら良いのだろうか?
友梨のいない、今、この状況で。
「ダメよリズ、そろそろ中に戻らないと。ほら、雪が降りてくるのがはやい。冷えるわよ、今夜は」
しばらく歩くと、病院のポーチの隅で、枯れ葉を集めている小さな女の子と、その隣に
……友梨の姿。
和音は思わず、その場で足を止めて2人の姿を見つめてしまう。
「リズ、まだ、いや。ママぁ、リズと、いっしょ」
女の子は、そう言うと、友梨に甘えるように、枯れ葉を掴んでいない右手を友梨に絡めてきた。
「リズ……」
リズの甘えた仕草に、友梨は愛しくて仕方がない…と、いう顔になり。
「甘えたさんね。じゃあ、ママのストールを巻いていて?ほら、これで暖かい。でも、もう少し。後一枚だけ、お気に入りの枯れ葉が見つかったら、終わりにしましょ?」
と、言って、屈んで、ストールごとリズを抱きしめた。
そして、自分を見つめていた和音に気付くと。
『コンバンハ』と、小さく唇を動かして、会釈をしてみせた。