記憶混濁*甘い痛み*
その日の、夜。
友梨との時間をこじ開けている為に
必然的に夜中までかかる残業をオフィスに戻って和音が片付けていると。
…ルルルルル…
と、携帯の着信音。
オフィスには、もう和音1人しかいない為
「もしもし?何の用?」
……と、和音。
着信表示されていたのは、親友の忍。
『和音?どう?友梨の具合。和音も、無理してない?』
和音の為を思ってか、忍は明るく声をかけてきた。
和音は、そんな忍の配慮に気付き。
「ん?ああ…心配、かけてるよな。ワルイ」
と、言って、苦笑に近い笑みを口元に作った。
その和音の雰囲気に、忍は電話越しで、暫し口を噤み……けれど思い切ったような声で。
『……気分を害させたらゴメン!でも…君の為に言うよ?和音、一度、友梨と離れたらどうかな?』
……と、言った。
「…離れるって…」
聞いた和音は、意味が……解らなかった。
離れるって……今以上どうやって離れたらいいんだ。