二人の物語

正月の夜

「どこに行くの、沙奈」
夜の宴会を抜けて従姉達と部屋に戻っていた私は、コートを羽織って襖に手を掛けた。
「んー? 酔い覚ましに風に当たってくる」
「風邪ひかないようにねー」
その声に軽く頷くと、私は後ろ手に襖を閉めた。




本家は、広い。
もうね、三十人位で宴会できる広間とか(三部屋位襖ぶち抜き)、納戸とか客間とか離れとかなんかもう都会に住む私達からすると笑っちゃうくらい凄い。
ここに祖父母と長男家族だけが住んでるとか、掃除どうなのよって言いたくなるくらい。

その部屋を巡る様に配置されている廊下を裸足で歩きながら、離れに近い端の部屋に入った。
部屋を突っ切って、雪見障子をあける。
そして閉まっていた雨戸をあけてから、縁側に腰を下ろして障子を閉めた。


そのままごろりと、横になる。
見上げた空には、私の住んでいる場所からは見る事の叶わない無数の星。
冬で空気が綺麗だから、夏場よりも多く見える気がする。


寒いな、と呟いてロングコートの裾に両足を引き入れる。
そのまま寝転がりながらほわほわと息が白く染まるのを見つめて、ゆっくりと目を瞑った。
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