二人の物語
「康の、おかげ、かな」


「俺はお前のおかげで、人探しが得意になりそうだけどな」



その声と共に、見上げた視界にひょっこりと康が入り込んできた。


「あれぇ、康? 何してんの」
ぶすっとした表情の康が、私の隣に腰を下ろす。

私は寝転がったまま、康の姿を目で追った。
「何してんのじゃねーよ、それ俺のセリフだろ。風邪ひきたいのか?」
ばさりと体にかけられたのは、康のコート。

それに驚いて、慌てて起き上がる。
「寒いから! 康が風邪ひいちゃう」
掛けられたコートを康に押し付けると、口端が微かに上がった。

「それで看病してくれたら、沙奈を独占できるな」
「……っ」

ぼわっ、と頬が熱くなるのが自分ながらよくわかる。
真っ赤だよね! リンゴも真っ青になるくらい、きっと真っ赤さ!
「康ってば、見ない内に口が上手くなった!」
照れ隠しに叫べば、余裕な表情で康が笑う。

「ストレートに言わなきゃ、鈍い沙奈に伝わらない」

その言葉に、恋愛偏差値0%とレッテルを貼られた昼の事を思い出して、口を尖らす。
そして思いついた事を、即行動した。
立ち上がってコートを広げると、そのまま頭からかぶったのだ。康と一緒に。
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