二人の物語
私はニヤリと笑うと、徐に康の腕に手を置く。


「沙奈?」


意味が分からず首を傾げる康の唇に、自分のソレを重ねた。
昼に康にされたよりは長く、押し付ける。
そっと離れた私を、康は目を大きく開いて見つめていた。
「やり返し。おねーさんを馬鹿にして」
ニヤリと笑うと、康はパチパチと瞬きを幾度かして額を片手で押さえながら深く息を吐き出した。

「お前鈍いくせに、行動はストレートなんだよな……」

「何それ」

言い返したけれど、私の頭の中は康に一矢報いることができてちょっと浮かれていた。




だから。


……浮かれていたんだよ!


まさか、やり返されるとは少しも思わなかったんだってば!

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