二人の物語
ぶぁぁぁあっ、と一気に顔に血が集まる。

さ、先!? は? 何これ!

笑う康は、照れも無表情も通り越して、色気むんむん。

うっわ、何これ! 誰よこいつ!

目を逸らしたら負けな気がして懸命に睨みつけながら、お休みとか間抜けな声出して逃げ切れないかと康の隙を探してみる……けど、隙も何も私達の間に隙間がないっ!

「半年俺を待たせた上にここまで煽っといて、じゃお休み~とか言って逃げようとか思ってないよな?」

今、一言一句間違いなくそのように考えましたが、何か!?

「わっ、私が悪かった! そういうことで、どいてってば!」


これは謝り倒すに限るよ!
逃げるよ、頑張って逃げるのだよ!!



無意識に潤み始めた目で見上げれば、康が何かに耐える様に顔を顰めた。



「……だからっ、するなら意識的にしろ!」

「は?」

何を?

きょとんと首を傾げれば、康は目を逸らして呻く様に声を上げるとがばっと体を起こした。
「俺は寝る! 沙奈も寝ろ!」
そのまま、足音高く部屋を出て行ってしまった。


「はぁ?」


康のコートを手に持ったまま、置いてけぼりの私はぽかんと口を開けたまましばらくそのまま呆けていた。





……それを翔とその彼女に見つかって、笑われるまで。
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