二人の物語
2章 想いが通じた日

正月の午後

「え? マジで? うっひょー」

目の前で、自分の隣にいる人間とおんなじ顔した人間が、きっと絶対隣にいる人間がやらないであろう反応を見せていた。
目を真ん丸に見開いてぱっかりと開いた口は、ごみでも入れて☆ と私に訴えかけているようだ。
「今ほど、お前と双子で嫌だと思った事はないな。その顔はやめろ、自分が間抜け面晒してる気分になる」

双子だけど、そっくりな身体的特徴とは違って、性格は真逆な二人。

一応兄の翔と、一応弟の康。
数十分の差で順番を決められるのは不本意だと、そういえば高校の時、康が言ってたっけ。
昔なら、俺の方が兄だったかもしれないだろうと、本気で言っていたなぁ。




康に連れられて祖父母の家……本家と呼ばれるその家……に戻った私は、とりあえず母親に怒られた。

それはそうだろう。
本家についた途端、気が付いたらいなくなっていたわけだから。
祖父母の家は山の中腹にあって、しかもその集落の中でも一番山側に位置している。
もしかしたら遊びに行って雪の中で何かあったのかと、心配していたらしい。
現に私がさっきまでいた場所は、本家の庭先を抜けた冬以外はのっぱらの広がる集落から少し山に入り込んだところにある場所だった。
ほとんど気持ちが薄れかけていたとはいえ翔の声に反応して逃げ出した私は、どれだけ少女趣味全開だったのだろう。

周りのことなど、考えることすらできなかった。
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