二人の物語
ふんっと顔を背ければ再び大笑いに発展した翔の所為で、何事かと従兄妹たちが集まってきた。


「何してんのあんた達」

声を掛けてきたのは、私の五歳上の従姉、愛美姉さんだ。

「翔が馬鹿で、康が乱暴なだけ」
「「ちょっと待て」」

ステレオの様に突っ込む翔と康に、従兄妹たちが噴き出した。
「さすが双子! 突っ込むタイミング、ばっちりだね」
「それでどうしたのよ、沙奈。翔が馬鹿なのはよくわかるけど、康は乱暴とは程遠いでしょ?」
それに答えようとした時、動いたのは翔だった。


「いや、それがさぁ」

そう言いながら、私の頭に手を伸ばしてくる。
うおっ、その仕草はあれだな! 髪の毛ぐしゃぐしゃするつもりだな!
過去に幾度かやられた行動を思い出して反射的に後ずさろうとした途端、同じタイミングで腕を引かれて思ったより体がよろけてしまった。
すぐに康が手をまわして支えてくれたけれど、ここは怒るところだよね!?


「何すんのってば! 危ないでしょうがっ」


その腕に掴まったまま、思いっきり康を睨みあげる。
だというのに、人を引っ張った張本人はあさっての方を向いていて顔がまるきり見えない。
背の高さを利用しやがってぇぇっ!


ぐるぐると威嚇すると、盛大に溜息をつかれた。
周りの従兄妹達、全員から。


「……何」


手近にいる愛美姉さんに問い掛ければ、まるで痛い子を見る様に頭を振られた。


……何さ、この意味の分からない疎外感。


「……恋愛偏差値0%な沙奈は置いといて。とりあえずこういうことだから、皆」

……あれ? ちょっと翔ってば。数値が0になりましたけど?! しかも、どういうことですか? こういうことって。


翔が痛々しく息を吐き出すその態度に顔を顰めれば、そうそうと愛美姉さんが手を叩いた。
「あんた彼女連れてきてるんだって? 紹介しなさいよ! 婆さまが自分の事のように吹聴してたわよ」
え、何この気を取り直して感いっぱいの雰囲気。

翔はその言葉に、玄関の方へと目を向けた。

「今、親から電話が来たとか何とか……あ、戻ってきた」
一斉に、皆が翔と同じ方向に顔を向けた。
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